- 2023/02/28
- 2024/04/11
防災におけるメタバースの活用方法|VR事例も紹介
日本は地震・津波・洪水などの災害が多い国ですが、現在、防災対策としてメタバースやVRの技術が注目されています。
この記事では、防災にメタバース・VRがなぜ注目されているのか、そして実際の活用シーンをご紹介していきます。是非参考にしてください。
目次
1.メタバースとVRはどう違うのか?
メタバースやVRを活用するメリットを伝える前に、まずは「メタバースとVRの違い」についても触れていきます。
1-1.メタバースとは
まずは、メタバースという名前の由来から見ていきましょう。メタバースは「メタ(meta)=超越した」と「ユニバース(universe)=世界」の2語を合わせた造語です。
直訳すると「超越した世界」になりますが、インターネット上でAR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術を使い、アバターを通じて人と人が繋がる3次元の仮想空間のことをメタバースと言います。
▶︎▶︎関連記事:注目のメタバースとは?仕組みやメリットなどやさしく解説
1-2.VR(バーチャルリアリティ)とは
VR(Virtual=仮想、Reality=現実)は日本語で”仮想現実”。ARのように現実を拡張するのではなく、見えるもの全てが仮想世界というのがVRです。
自分がその世界に入り込んでいるような体験ができるので、CGで作られた別世界はもちろん、360°カメラで撮影した異国の空間を体験することもできます。
基本的には、VRゴーグル(ヘッドセット、ヘッド・マウント・ディスプレイ)という目元を覆うデバイスを使って仮想世界にアクセスするのがVRです。
2.災害で活用するならメタバースか?VRか?
メタバースとVRのどちらが優れているかということはなく、どう活用するかによって選び方が変わります。
2-1.メタバース:コミュニケーションを重要視したい場合に活用
メタバースは3DCG空間でアバターを通してコミュニケーションがとれるツールなので、複数人以上で行動する防災訓練や、防災について考えるセミナーなどのイベントを行うのに適した技術です。
2-2.VR:個人でリアリティのある体験をしたい場合に活用
VRは基本的に1人または少人数に向けて、没入感のある体験を提供することができます。
例えば、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を活用し、現場を体験しているかのような災害シミュレーションを行うにはVR技術が適しています。
3.防災にメタバースが注目されている理由
続いて、防災にメタバースが注目されている理由をご紹介します。
- 災害シミュレーションで疑似体験ができる
- 災害意識を高められる
- 被害の規模を早く把握できる
- 避難訓練に役立つ
3-1.災害シミュレーションで疑似体験ができる
メタバース・VRに共通して言えることですが、災害の疑似体験を行うことができるのが大きな強みです。
災害を経験したことがないと、その怖さや危機感を抱くことは難しいかもしれません。災害時に避難勧告が出ているのに「自分は大丈夫」と思って逃げるのが遅れてしまったり、災害時にどんな行動をしたらいいのかわからなかったりするので、事前に疑似体験をしておくことは防災意識を高める上で重要です。
3-2.災害意識を高められる
メタバースやVRは、災害意識を高めるツールとしても役立ちます。
メタバースやVR体験は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)がなくてもパソコンやスマートフォンで体験できるサービスもあります。
例えば、家族で年1回災害シミュレーションを経験することで、防災に関して意識を普段から高めてもらうことにもつながっていきます。
3-3.被害の規模を早く把握できる
災害後の復旧活動にも役立つとして、メタバースは注目されています。特に「デジタルツイン」を用いることで、災害前のデータと災害後のデータを見比べることができれば、被害の大きさを即座に把握することができ、救助や復旧作業に活かせます。
もし、災害前のデータがない・またはデータを取り出すのに時間がかかる状態だと現状把握するだけで数日かかることもあり、被害がさらに広がってしまうリスクがあります。
デジタルツインとは?
デジタルツインは、現実に存在する場所や施設を、IT技術を駆使してデジタル空間にコピーすることです。現実空間の複製をデジタル空間に作るようなイメージに近いです。
デジタルツインには様々な解釈がありますが、現実空間を再現するだけでなく、リアルタイムに連動し、現実の最新データが常に反映されるものもあります。
3-4.避難訓練に役立つ
いざ災害が身近に起きてしまうと誰でも慌ててしまうもので、避難場所を普段から覚えている人は少ないと思います。さらに、引っ越したばかり・旅行先などで災害に遭うと、どうしたら良いかわからなくなります。
例えば、地域毎にメタバースで避難訓練を行うことで、言葉で避難場所を聞くよりもアバターを動かして避難場所に移動した方が記憶に残っている可能性が高いのではないでしょうか。
4.国もメタバースに力を入れている
国土交通省が提供している「プラトー」というプラットフォームがあり、日本全国の点群データを取得できるようになっています。3Dデータを活用し、災害だけでなく幅広くメタバースを活用していくという姿勢が感じられます。
プラトーとは
国土交通省が主導する「PLATEAU(プラトー)」は、日本全国の3D都市モデルの設備・オープンデータ化を行うプロジェクトです。
3D都市モデルを活用したサービス・アプリ・コンテンツ作品コンテストの「PLATEAU AWARD」が先日実施されて益々注目が高まっています。
▶︎▶︎PLATEAU AWARD 公式サイトはこちら
5.防災×メタバースの活用事例
ここからは防災にメタバースを活用している国内事例を3つ紹介していきます。
- 防災訓練:足立区
- 防災訓練:日本版Smart Society
- 防災訓練:安全伝承館
5-1.防災訓練:足立区
東京都足立区とNTT東日本は、区内の中学生を対象にメタバース空間を使った防災訓練を実施。
街を再現したワールドに入り、アバターを操作して防災に関する動画の視聴や、消防署職員に質問をするなどして防災意識を高めました。
この合同訓練は、コロナ禍でも集合形式で実施できる新たな訓練のスタイルとして、タブレットを使って実施されました。謎解きやクイズを織り交ぜることで、生徒一人ひとりが主体的に学べる仕組みが作られています。
5-2.防災訓練:日本版Smart Society
NTTコミュニケーションズ株式会社は、2020年から「日本版Smart Society」について取り組んでおり、デジタルツインを活用した社内課題解決を目指して実証実験を行なっています。
取り組んでいるテーマの一つが「気象災害」。中でも水災害に焦点を当て、高確率で発生が予測されている地区の居住者を対象に「デジタル防災訓練」を実施。水害の発生前から発生後までを体験できるシミュレーションを行いました。
そこから見えた個人の行動を可視化、再認識し、防災・現在につながる解決策を導いています。
▶︎▶︎NTT 技術ジャーナル記事はこちら
5-3.防災訓練:安全伝承館
株式会社バーチャルキャストと株式会社インフィニットループは、株式会社明電舎と共同で、社員向け安全教育の強化を目的とした「メタバース安全伝承館」を開発。
「安全伝承館」は静岡県沼津に施設がありますが、遠方の方にも体験してもらえるようにとメタバースで再現。
国内製造現場・海外現法含めて全ての社員の参加が可能となり、防災に関して意見交換ができるほか、メタバースだからこそ事故事例をCGで再現し、視覚的により深く理解させる工夫をしています。
6.VR/AR×防災の活用
最後に、VR/AR×防災の活用事例も紹介します。没入感のある体験ができる先端事例を参考にしてみましょう。
- 災害体験AR:東京海上日動
- 防災訓練:明治安田生命
6-1.災害体験AR:東京海上日動
東京海上日動は、スマートフォンから簡単に自然災害のシミュレーションができる「災害体験AR」を公開しています。ブラウザ上で「洪水を体験」「土砂災害を体験」を選択。位置とシミュレーションの種類を選ぶと、自分の今いる場所で災害が起きた場合、どのような状況になるのか視覚的に体験できます。
職場や自宅、よく出入りする場所でチェックすることで、日頃から防災意識を高められるサービスです。
▶︎▶︎東京海上日動 災害体験ARページはこちら
6-2.防災訓練:明治安田生命
明治安田生命は、空間データ活用プラットフォーム「スペースリー」を活用した研修VRコンテンツを作成。コロナ禍でも安心安全に防災訓練ができる仕組みを整えました。
VR研修コンテンツは、備蓄倉庫を360°撮影し、避難経路の確認や備蓄物資の配布作業をするといったアクションを疑似体験し、操作して行うことができます。
従来の集合型訓練コストを延べ600名に対して効率化できたという結果も出ています。
7.まとめ
防災訓練の実施や防災意識を高める上で、メタバースやVR/ARなどの先端技術が役立つことをお分かりいただけたことでしょう。
安全が確保された状態でリアリティのある研修を実施できるので、企業側も安心して活用することが可能です。
「社員の安全意識を高めたい」「これまでの訓練と質を変えたい」とお考えの方は、導入をご検討してみてはいかがでしょうか。
メタバースtipsを運営しているリプロネクストでは、法人・自治体向けメタバースについて企画・プラットフォーム選びから開発までを一貫してサポートしています。「こんなメタバースは作れるだろうか」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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