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  • 2023/11/01
  • 2024/07/26

デジタルツインとメタバースの違いとは?デジタルツインのメリットと事例も紹介

仮想空間を活用した技術に「デジタルツイン」と「メタバース」があることをご存知でしょうか?

デジタルツインとメタバースは、ビジネスにおける課題解決が可能なツールとして近年注目を集めています。しかし、それぞれどのような違いがあるのか、わからないこともあるでしょう。

そこで今回は、デジタルツインとメタバースの違いについて詳しく解説します。デジタルツインのメリットやメタバースが活用されている分野についても紹介しますので、導入を検討している方は、ぜひご覧ください。


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目次

1.デジタルツインとメタバースの違いとは

デジタルツインとメタバースは、共に仮想空間を活用する技術ですが、それぞれの内容は異なります。ここでは、デジタルツインとメタバースの特徴と違いについて解説します。

1-1.デジタルツインとは

デジタルツイン イメージ

引用:ICT Buisiness Online

デジタルツインとは、現実世界の情報を仮想空間上に再現する技術を指します。デジタルツインの活用によって、分析やシミュレーションが可能です。

デジタルツインの由来は、現実と瓜二つな双子をデジタルデータとして構築することから名付けられています。

デジタルツインは、すでに世界中で活用されています。アメリカのNVIDIA社は、3Dコラボレーションやリアルタイムシミュレーションでの活用を目的とした「NVIDIA Omniverse」を開発。

このプラットフォームの使用により、製造ラインのシミュレーションや、現場のオペレーション業務の改善などに活用されている事例もあります。

日本では、2020年から国土交通省の主導で3D都市モデルの整備や活用、オープンデータ化を目的とした「Project PRATEAU」が始まっています。すでに全国の3D都市モデルが公開されており、災害リスクの可視化や都市計画の作成に役立てられています。

1-2.メタバースとは

メタバース イメージ

メタバースとは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間を指し、自分の分身である「アバター」を利用して、現実世界と同じようなコミュニケーションが可能です。

メタバースの語源は、超越を意味する「meta」と宇宙を意味する「universe」を組み合わせた造語です。アメリカの作家ニール・スティーヴンスンによるSF小説「スノウ・クラッシュ」にて使われたのが始まりと言われています。

VRゴーグルを装着して、自身のアバターを操作しながら仮想空間を移動できるほか、ほかのアバターとの交流、イベントの開催も可能です。また、土地やデジタルオブジェクトの取引といった、現実世界と同じような経済活動が行われるケースもあります。

1-3.デジタルツインとメタバースの違い

デジタルツインとメタバースは、共に仮想空間を利用するプラットフォームですが、それぞれの違いは現実空間を再現するか否かです。

デジタルツインの場合は、仮想空間上に現実世界の情報を再現しますが、メタバースの場合は再現せずに独自の世界を構築します。また、アバターの活用についても違いがあり、メタバースはアバターを使うもののデジタルツインはアバターを使用しません。

そのほか、利用する目的も異なるため、デジタルツインとメタバースは同じであると考えないよう注意が必要です。

2.デジタルツインで活用されている技術

デジタルツインで活用されている技術には、以下のようなものがあります。ここでは、それぞれの技術について詳しく解説します。

2-1.AI

AIとは人間の知能を人工的に再現する技術のことで、人工知能とも呼ばれています。膨大なデータをコンピューターやシステムが学習し、得られたデータをもとに問題の解決や意思決定などを行います。

デジタルツインでも、現実世界のさまざまなデータを取得・学習させることで精度の高い分析結果を提供します。

2-2.IoT

IoT(Internet of Things)は、建造物や機械などさまざまな機器をインターネットへ接続し、相互通信を行う技術で「モノのインターネット」とも呼ばれています。外出先でスマートフォンのアプリでエアコンの操作をすることもIoTの一環です。

デジタルツインでは、現実空間のデータを収集させる手段として取り入れられています。収集したデータは、インターネットを経由した仮想空間の構築に用いられます。また、工場においては設備の稼働状況や温度、湿度といったデータを収集して遠隔管理することも可能です。

2-3.5G

5G(5th Generation)は、次世代の高速通信規格で、日本では2020年春から提供されています。前世代の4Gと比較して、通信速度が20倍も上がっており、大容量のデータ通信も可能です。

デジタルツインを構築するためにも5Gの活用は必要であり、膨大なデータの取得に欠かせません。高速通信が実現することで、遅延を軽減しリアルタイムでデータの反映が容易になります。

2-4.CAE

CAE(Computer Aided Engineering)は、コンピューターを用いて製品の設計や開発、解析を行うツールです。

デジタルツインでは、仮想空間上に再現されているモデルのシミュレーションが可能です。コンピューターの性能が向上したことや、IoTの発展によってさまざまな情報の取得が可能となり、CAEによって、リアルタイムでの高度な分析ができるようになります。

ARとVRは、デジタルツインの構築において重要な役割を担います。ARは「拡張現実」とも言われる技術で、現実世界に仮想空間の情報を投影できる技術です。対するVRは「仮想現実」とも言われ、ヘッドマウントディスプレイを着用して仮想空間にいるような体験が可能です。

デジタルツインにおいてARとVRは、仮想空間上で想定外のトラブルが発生した際の対応を体験できます。そのため、現実世界で同様のトラブルが起きた場合のフィードバックが可能な点が特徴です。

3.メタバースが活用されている分野

メタバース イメージ

さまざまな分野において活用が広がっているメタバースですが、主にゲームや教育分野において活用されています。

ここでは、ゲームと教育分野にてどのように活用されているのか見ていきましょう。

3-1.さまざまなゲームでメタバースが活用されている

ゲーム分野においてメタバースが最初に注目された出来事は、2003年にリンデン・ラボ社が開発した「セカンドライフ(Second Life)の登場です。セカンドライフでは、ゲーム上の仮想空間内で作成したアバターを用いて、ユーザーとの交流や映画鑑賞などが楽しめます。

セカンドライフでは、不動産取引やブランド品の購入など現実世界と同じような行動が可能。中には、セカンドライフ内で得た資金で生活をしているユーザーも存在していました。

現在でも「ストリートファイター6」や「あつまれどうぶつの森」などの人気ゲームにて、アバターを作成して世界中のプレイヤーとの交流が楽しめます。

3-2.教育分野での活用も広がっている

教育分野においても、メタバースは世界中で活用されています。アメリカのスタンフォード大学では、生徒が仮想空間上でアバターを用いて討論を行うなど、実用化が進んでいます。

オンラインゲームプラットフォームの「Roblox(ロブロックス)」が世界中の学校を対象に教育ゲームを開発。また、メタバース上に大学のキャンパスを創設する動きがあるなど、メタバースを活用した教育が進んでいます。

日本でも新潟医療福祉大学では、メタバースを活用したオープンキャンパスを開催。遠方に住んでいる高校生でもメタバース上で個別相談が可能です。また、メタバース上での学生寮の再現やアバターを配置するなど、メタバースを初めて利用する高校生でも気軽に参加できるよう設計されています。

今回紹介した事例のほかにも、国際交流や不登校支援など教育分野におけるメタバースの活用は今後も広がりが予想されます。

4.デジタルツインのメリット

デジタルツインの活用によって、さまざまなメリットが得られます。ここでは、デジタルツインの4つのメリットを紹介します。

4-1.品質の向上

デジタルツインを導入することで、現実世界よりもコストを抑えながら何度でもシミュレーションを実施できます。物理的な制限によって実施できない実験でも、仮想空間であれば可能である点もデジタルツインの強みです。

さまざまな仮説を立てながら実験を重ね、得られた結果をもとに現実世界に落とし込むことで、品質の向上につなげられます。

4-2.コスト削減

製品の開発や改善をするための実験には多くのコストが発生するため、現実世界では実験を行う回数は限られてしまいます。また、実際の現場を使用しての実験では、ある程度の時間も要するため、本来の業務に少なからず影響が出ることも予想されるでしょう。

デジタルツインを用いた場合、仮想空間で試作品を開発し、実験が行えることから現実世界よりもコストを抑えられます。実験を重ねながら完成品へ近づけられることから、結果的に開発にかかる時間の短縮も可能です。

4-3.スムーズなメンテナンスの実現

試作品の開発などに活用できるデジタルツインですが、既存の設備を運用する場合でも効果を発揮します。例えば、製造業において起こりうるトラブルを予測し、未然に防ぐことも可能です。

製造ラインでトラブルが発生した際、まずは原因の特定から始まり復旧へと進みます。この場合、生産が再開するまでに時間がかかり、損失が拡大するリスクもあります。

デジタルツインで稼働状況を随時確認し、トラブルを予測することで復旧にかかる時間の短縮が可能です。また、トラブルの予測をもとにメンテナンス計画の作成も容易になります。

4-4.万全なアフターケア

製造業では、設備のトラブルが発生した際に必要な部品を、都度調達しなければならないケースもあります。調達までに時間を要してしまう分、復旧が遅れるといったリスクもあるでしょう。

デジタルツインを活用した場合、顧客に製品が渡ってからも使用状況から交換時期の把握ができます。そのため、適切なタイミングで交換を勧める通知を送られるといったアフターケアが可能になるでしょう。手厚いフォローによって、顧客満足度や企業価値の向上にもつながります。

5.デジタルツインの活用事例5選

実際に、デジタルツインを業務に活用している企業も多くあります。ここでは、デジタルツインを導入している企業の活用事例について紹介します。

5-1.株式会社大林組

大林組 イメージ

引用:大林組

株式会社大林組では、デジタル空間上の3Dモデルにクレーンの位置や人員の稼働状況をリアルタイムで反映できる「4D施工管理支援システム」を開発。プロ野球北海道日本ハムファイターズの本拠地となる「エスコンフィールドHOKKAIDO」の建設工事にて実証実験を行いました。

4D施工管理支援システムは、ドローンを用いて取得した点群データを施工状況と合わせて現場の起伏をデジタル空間に再現。デジタル空間内に重機の稼働状況や監視カメラの映像、作業員の状況などを実際の現場と連携してデジタル空間上にも反映できます。

実証実験でも、クレーンに無線情報収集システムを搭載し、クレーンの稼働状況をリアルタイムに取得。取得したデータから鉄骨部材を取り付けたタイミングから出来高の算出といった管理業務に活用していました。

5-2.清水建設株式会社

清水建設 イメージ

引用:清水建設

清水建設株式会社では、プラントエンジニアリング「Growing Factory」を提供。清水建設が独自開発した生産シミュレーターと連携システムを活用して、プラントモデルのデジタルツインを構築します。

デジタルツイン上では稼働シミュレーションによって、短時間で施設計画の作成が可能。また、事業予算に沿った生産・物流ラインの自動化や省人化を検討し、シミュレーション結果から設備や機器の組み合わせを提案します。

工場が稼働した後も、生産ラインにおいてボトルネックとなっている部分や、ラインの稼働率などをデジタルツイン上で可視化。工場の稼働率アップに向けた改善策の検討・実施のサポートも行います。

5-3.東急建設株式会社

東急建設 イメージ

引用:東急建設

東急建設株式会社では、実際に建築する建物をデジタル空間上に再現できる「BIM」を使用した「仮説計画ツール」の運用を開始しました。

仮設計画ツールの使用により、BIMの設計モデルから施工計画モデルの作成が可能。従来の施工計画業務の効率化が実現できるため、全社的な運用も始めました。

作業所や各部署、専門業者が同じデータ環境下で連携可能なため、施工計画モデルと実際の業務が同一である状態にできます。そのため、デジタルツインを活用した施工計画業務の効率化を実現しました。

5-4.川崎重工業株式会社

川崎重工業株式会社では、Microsoftと共同でインダストリアルメタバースに関する取り組みを進めており「Microsoft Build 2022」にて紹介されました。

インダストリアルメタバースとは、現実世界をデジタル空間に再現する技術である「デジタルツイン」を活用して構築されたメタバース空間で、シミュレーションやデザイン設計といった用途での活用が想定されています。川崎重工業株式会社では、インダストリアルメタバースの構築により、工場の全工程をデジタル空間でシミュレーションできる環境の構築を目指しています。

産業全体のデジタル化やテクノロジーの進化が進んでいる中で、製造業全体でロボットの導入が進んでいます。

一方で、ロボットが想定とは異なる動きをしたことによるトラブルで、生産がストップするといった事態も考えられます。また、ロボットの操作だけでなくサポートやメンテナンスなどにおいてメーカーやシステムインテグレーターとの連携も必要です。

このような課題を解消すべく、川崎重工業株式会社では「Microsoft Azure」や「Holo Lens」を使用して、メタバース上での共同作業やデジタルツインを活用して遠隔地からのロボット操作などの実現を目指しています。

これにより、万が一ロボットが故障した場合に問題解決がスピーディになるほか、予防保全を行うことでトラブルの未然防止ができるようになります。

5-5.株式会社難波製作所

難波製作所 イメージ

株式会社難波製作所は、リプロネクスト制作のもと自社工場をデジタル化したバーチャルツアーを導入しています。

バーチャルツアーでは、工場内を360°見回せる形となっており、設備のアピールポイントを動画で紹介しています。「オンライン商談の際の営業ツール」や「採用活動向けの案内ツアー」としても活用。オンライン商談では、画面共有をしながら案内をすることで工場の魅力が伝えられるといった効果も得られています。

6.まとめ

デジタルツインとメタバースは、どちらも仮想空間を活用したものですが、細かい部分では異なる技術です。

デジタルツインは現実世界の情報を仮想空間上に再現し、シミュレーションを実施することが目的です。一方のメタバースは、仮想空間に現実世界と異なる世界を構築し、アバターを用いて他のユーザーとの交流が楽しめます。

仮想空間をどのように活用するかによって、デジタルツインもしくはメタバースどちらかを活用するかが変わっていくでしょう。

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