- 2024/04/26
- 2024/05/16
ブロックチェーンを支える様々な技術|基礎知識や活用事例
「ブロックチェーン」とは、次世代の社会基盤となる可能性を秘めた革新的な技術です。
現在では、仮想通貨だけでなく、金融分野や他の分野でも実用化が進んでおり、デジタル時代の中で重要な存在となっています。
そんなブロックチェーンを会社にも導入したいと考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
「メタバースにブロックチェーンの導入を検討しているが、導入するにはどのような技術が必要なのかがわからない」
「実際に導入している企業の事例を参考にしたい」
しかし、上記のようなお悩みを抱えて中々手が出せないといった方も少なくないはずです。
そこで本記事では、ブロックチェーンの定義や仕組み、導入事例などについて詳しく説明していきます。
ブロックチェーンの導入に向けて、ブロックチェーンについての知識をつけていきましょう。
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目次
ブロックチェーンって何?
ブロックチェーンは、一般的には「取引履歴を暗号技術を用いて過去から連続したチェーンのようにつなげ、正確な取引履歴を保持しようとする技術」とされています。
この技術は、データの破壊や改ざんが非常に困難であり、システムの停止リスクが低いため、銀行業務やシステムに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンは、取引データを時系列で記録するための仕組みです。取引データは箱「ブロック」に格納され、インターネットに接続されたP2Pネットワークの参加者同士で共有されます。生成されたブロックをチェーンのようにつなげて蓄積し、改ざん耐性を持ちます。これにより、分散型台帳としての役割を果たすようになりました。
従来のネットワークは中央集権型の一元管理が主流でしたが、ブロックチェーンでは分散型の管理が行われています。
さらに、ブロックチェーンの技術は、さまざまな暗号アルゴリズムを活用しており、改ざんが困難なデータ構造を持っています。これにより、高いセキュリティを確保し、データの改ざん耐性や透明性を実現可能となりました。また、今後はさらなる拡張が期待され、送金システムだけでなく、さまざまな経済活動のプラットフォームとしての可能性も広がっています。
ブロックチェーンとビットコインの違いとは?
ビットコインとブロックチェーンはしばしば一緒に議論されるため、「ブロックチェーン=仮想通貨(暗号資産)」と思われることがありますが、ビットコインは世界初の仮想通貨(暗号資産)です。
ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)によって公表された論文に基づくもので、外部機関に頼らずに通貨価値を確保する金融システムです。このシステムは、ブロックチェーン技術を利用しています。逆に、ブロックチェーンはビットコインの中核的な技術基盤としての役割を果たしています。
ブロックチェーン技術は金融サービス業にとどまらず、商品販売業界や公共事業(電気や上下水道の利用状況の追跡など)にも応用されています。住宅賃貸、カーシェアリング、食糧の生産や流通など、様々な分野での利用が可能であり、ブロックチェーンはこれらの領域において大きな可能性を秘めています。
ブロックチェーンのメリット
ここからは、ブロックチェーンのメリットについてお話していきます。
導入をご検討の方は、ぜひ参考にしてみてください。
セキュリティが固い
ブロック内には前のブロックの情報が含まれており、これにより改ざんが大変困難になっています。
さらに、公開鍵暗号やデジタル署名を使用することで、通信の信頼性を高めています。
ブロックチェーンの通信への不正な介入や悪意のあるデータの紛れ込みは、現実的には非常に困難です。
また、新しいブロックの生成は、コンセンサスアルゴリズムに従い、特定の条件を満たす必要があります。これにより、ビザンチン障害耐性を持ち、システムの安全な運用が可能になります。
システムダウンしにくい
ブロックチェーンは、複数のマシンが参加することで運用される分散型データベースです。
この仕組みでは、各マシンが同じデータを保持しており、全てのマシンが同時に停止しない限り、システム全体としては絶えず稼働し続けることができます。
一方、中央集権型の仕組みでは、中央サーバーが攻撃や故障によって停止すると、全てのサービスが停止してしまいます。
ブロックチェーンでは分散型のため、一部のマシンに問題が発生しても、他のマシンの力でシステムは継続して動作することが可能です。
データの信頼の担保
データはトランザクションとブロックに分割されており、ブロックチェーン上で共有されます。
トランザクションは個々の取引やデータを表しているものです。
これらのデータは複数のマシンで共有され、個々のマシンはデータを検証しながら伝播させ、複数の検証済みトランザクションが(ネットワーク内のいずれかのマシンによって)ひとつのブロックに結合されます。
さらに、ブロックはコンセンサスアルゴリズムによって検証され、条件を満たすブロックがチェーンに追加される仕組みにより、データの信頼性が確保されています。
ブロックチェーンのデメリット
信頼性が高く、セキュリティも十分にあるブロックチェーンですが、デメリットはどんなものがあるのでしょうか。ここからはブロックチェーンのデメリットについてみていきましょう。
削除・修正が困難
ブロックチェーンは、連続的に新しいブロックを追加することしかできない制約があります。
この制約により、過去の任意のブロックを削除することはできません。
そのため、ブロックチェーンを使う意味がないシステム設計では、デメリットとなります。
ただし、プライベートチェーンの場合は、合意形成が必要ないケースもありますので、新しいチェーンを作り直すことなどで、疑似的に削除することは可能です。
それでも既存のデータベースよりも削除・修正の手間がかかることは確かといえるでしょう。
電力・ガス代が高騰する
ブロックチェーンは、最初ビットコインを実現するために作られました。その後、ブロックチェーンは仮想通貨以外の応用にも利用できるようになり、イーサリアムが登場しました。
イーサリアムはPoW(プルーフオブワーク)のパブリックチェーンであり、多くのマイナーが高い計算力を提供し続ける必要があります。高性能なコンピューターが大量の計算を行うため、電力消費量が増加する傾向があります。
処理速度が遅い
ブロックチェーンでは、マシン同士がデータの正確性を確認し合う仕組みがあります(合意形成)。
この合意形成のメカニズムは、コンセンサスアルゴリズムとして知られています。
ブロックチェーンにおいて、最も基本的なコンセンサスアルゴリズムはPoW(プルーフオブワーク)です。PoWでは、データの正確性を証明するために相応の計算コストが必要であり、そのため処理には時間がかかることが避けられません。
ブロックチェーンでできること
ブロックチェーンの驚くべき点は、具体的に何なのでしょうか。多くの人々は「インターネット以来の技術革新」という表現が過剰すぎると感じることでしょう。しかし、その答えを知るために、ブロックチェーンが可能にすることについて考えてみましょう。
ブロックチェーンの最も重要な機能は、「公正な取引の記録を残すこと」です。この「取引」とは、仮想通貨や金融商品に限らず、証券取引や保険契約、送金や資金調達などの金融取引に関連するものだけでなく、シェアリングサービス、食品のトレーサビリティ、著作権管理、美術品の所有権、医療サービス、さらには行政手続きや投票など、あらゆる分野で公正かつ透明な記録として残すことができます。これにより、公的な情報の紛失や改ざんのリスクを大幅に減らすことができます。
また、パブリックチェーン(公開型のブロックチェーン)は、管理者の必要性がないため、個人情報が中央集権的に集まることもありません。さらに、改ざんが困難なため、見知らぬ人との取引でも安心して行うことができます。
ブロックチェーンが広く普及した世界では、利用者はその技術が使用されていることを意識する必要もなく、書き換えや不正行為のリスクもない透明な取引が可能になるでしょう。私たちにとっても、ブロックチェーンは当然のように存在するインフラとなることが予想されます。
ブロックチェーンを支えている技術たち
ブロックチェーンの実現には、P2Pネットワーク、コンセンサスアルゴリズム、スマートコントラクト、偽造防止・暗号化技術など、複数の技術が組み合わされています。
スマートコントラクト
「スマートコントラクト」とは、契約行動を自動化するためにプログラム化された仕組みです。ブロックチェーン上で動作するエージェント・プログラムであり、特定の条件が満たされた場合に契約を実行するなど、様々な業務処理を記述することが可能です(ただし、実現性はブロックチェーンの基盤に依存します)。
偽造防止・暗号化技術
ブロックチェーンは、公開鍵暗号技術を利用して相手との安全な取引を実現し、台帳情報の共有による取引の透明性とプライバシー保護を両立しています。
P2Pネットワーク
P2Pネットワークは、ブロックチェーンのデータ管理を担当している技術です。
このP2Pネットワークは、クライアント=サーバー型とは異なり、特定のサーバーやクライアントを持たずに、各端末であるノード同士が対等に直接通信します。これにより、ユーザー同士の情報共有や決済のやりとりが可能になります。
従来の決済システムでは、サーバー側で情報を集約して管理するため、そのサーバーが障害を起こした場合はシステムに弱点(単一障害点)が生じてしまいます。しかし、ブロックチェーンの場合は、ユーザー全員が同じ情報を持っているため、複数のノードに障害が発生してもシステムを維持することが可能です。
コンセンサスアルゴリズム
ブロックチェーンには、中央集権的な管理者が存在しないため、台帳情報はネットワーク上の全参加者で共有されるため、全体の合意形成が必要となります。
合意形成を行うための方法は「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれ、ビットコインなどで使用されるPoW(プルーフオブワーク)やHyperledger Fabricなどで使用されるEndorse+Ordering Serviceなど、複数の方法があります。
ブロックチェーンの活用事例
次に、ブロックチェーンの活用事例についてご紹介していきます。ブロックチェーンの導入を考えている企業様はぜひ参考になさってください。
保険×ブロックチェーン
保険会社は、全国の営業拠点や事務センターにおいてブロックチェーン技術を採用し、保険申し込み書類の情報共有を行っています。
2018年2月、三井住友海上火災保険株式会社と株式会社bitFlyerは、協力して実証実験を開始したことを公表しました。
ブロックチェーンに保存されたデータは改ざんできないという特性を生かし、保険申込書類の確認業務を効率化し、信頼性を確保することを目指しています。これにより、保険証券の発行期間を短縮し、セキュリティを強化することが期待されています。
金融×ブロックチェーン
金融業界では、ブロックチェーン技術を活用することで国際決済の迅速化と利便性の向上が期待されています。
現在の国際送金では、対象国の銀行口座に送金する際には、複数の銀行を経由する必要があり、手数料や時間がかかることがあります。
しかし、IBM Blockchain World Wireでは、ブロックチェーンを利用することで、数日かかっていた決済を数秒にまで短縮することが可能です。さらに、銀行の経由数を減らすことで手数料を削減する仕組みも実現されます。
不動産×ブロックチェーン
不動産業界では、家賃情報が分散しているため、その正確性が担保されていないという問題や、業務の非効率化が不動産を探しているユーザーにとって不利になってきました。そのため、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを利用して共有することが求められています。
これらの問題を解決するために、ブロックチェーン技術を基盤とした不動産ポータルサイトを開設し、データの透明性と正確性を確保することを目指しています。
教育×ブロックチェーン
教育界では、学位証明書の発行にブロックチェーン技術を活用する取り組みが進んでいます。
現在、世界的には学位の公証が紙ベースで行われており、不正の問題も深刻化しています。
この問題を解決するために、ブロックチェーンを利用して公証を管理し、発行者や所有者(学位取得者)の情報を明確にすることで、公証の信頼性を高めることが可能です。
マレーシアでは学歴詐称の問題が深刻化していますが、その対策のために大学はブロックチェーン技術を活用した「e-Scroll」というシステムを導入しています。
ブロックチェーンには改ざんのリスクがなく、不正も不可能です。また、公証に所有権を付与し、ブロックチェーンで管理することで、公証の査証が不可能になります。
医療×ブロックチェーン
医療業界では、ブロックチェーンの活用が広がっています。これにより、患者の健康情報の管理や受診予約システムなど、身近な場面での利用が進んでいます。
以前は、医療機関ごとに異なるカルテが使われており、共有や連携が難しいという課題がありました。しかし、ブロックチェーン技術を使えば、個人の健康情報を収集し、統合して一括管理することができます。
また、ブロックチェーン技術を導入することで、電子情報の改ざんリスクを低減するだけでなく、患者自身も安全に情報を扱うことができます。
最近では、新型コロナウイルスのワクチン接種においても、予約や摂取証明のプラットフォームにブロックチェーン技術が使われました。
音楽×ブロックチェーン
現代では音楽の作成や販売が自由化していますが、権利情報の証明には業界団体や著作権管理団体による管理・証明が必要です。
そこでソニーは、世界で初めてブロックチェーンを利用した音楽権利管理実証に取り組んでいます。
ブロックチェーン技術の活用により、業界団体や著作権管理団体による管理・証明の手間を省くことができ、著作権情報の登録や証明が容易になります。
自動車×ブロックチェーン
ドイツのメルセデスベンツ社は、ブロックチェーンの活用による中古車販売の新しい取り組みを始めました。
彼らは、中古車の適正価格を算出するためのプラットフォーム「Vehicle Residual Value Management Platform」の開発に取り組んでいます。
このプラットフォームでは、ベンツ販売店や車検の記録をブロックチェーンで管理し、走行距離や車検証明の改ざんを防ぐことが目的です。
これにより、中古車販売における情報の透明性を向上させることが期待されます。
メタバースとブロックチェーンの関係性
最後に、メタバースとブロックチェーンの関係性についてお話していきます。
双方の相性がいかにいいか、分かっていただける内容となっていますので、ぜひご一読ください。
メタバースにおけるNFTの使い方
NFTは、メタバースと非常に相性が良く、メタバースでの経済活動の発展に大いに貢献すると考えられています。その理由は、以下の3つが主な要素です。
まず、メタバース上でのデジタルアセットの権利保護が挙げられます。メタバースでは、アバターやアバター用のデジタルファッションアイテムなどのデジタルアセットが取引されます。これらのアセットは、従来の方法では管理や取引が容易であり、デジタルデータ自体が価値を持ちにくくなり、制作者のインセンティブが生まれにくいという課題がありました。
しかし、NFTとしてこれらのデータを管理・取引することで、そのデータの唯一性を証明し、複製を困難にすることができます。これにより、データに価値が生まれ、経済活動が促進されると考えられています。
次に、メタバース間での相互運用を実現することができるという点です。NFTの特徴は、データ自体を特定の会社のプラットフォームに依存せずに管理できることです。この特徴を活用することで、異なるメタバース間でデジタルアセットを持ち運ぶことが可能になります。データの相互運用の仕組みにより、マルチバースの実現に貢献できると期待されています。
そして、メタバースへのアクセス権の管理も重要な側面です。特定のNFT保有者のみがアクセスできるメタバース空間を構築することで、メタバースへのアクセス権を管理することができます。これにより、メタバース空間での体験をプレミア化することが可能です。多くの高級ブランドは、自社が発行したNFT保有者限定で、限定イベントやアイテムの先行販売が行われるメタバースの運営を通じて、ファンのエンゲージメントを高める取り組みを進めています。
【自治体×NFT】地方創生に役立つNFTの活用事例9選 | メタバースtips
メタバースにおける暗号資産の有効活用について
NFTと同様に、メタバース上での経済活動には暗号資産が活用されることが予想されています。
その理由は、メタバースの運営者やチーム(例:DAOなど)が独自の暗号資産を発行することで、メタバースの発展を促進できるからです。
有名なメタバース発の暗号資産には、The SanboxのSANDやDecentralandのMANAなどがあります。これらの暗号資産を発行することで、メタバースの運営者やチームは運営資金を確保し、メタバースの成長に向けた投資を行うことが可能です。
メタバースの構築におけるブロックチェーンの活用
メタバースの最終形であるオープンメタバースの実現には、ブロックチェーン上でメタバースを構築することが大きな役割を果たすと考えられています。オープンメタバースとは、複数の組織によって運営されるメタバースのことであり、特定の組織によって運営されるクローズドメタバースとは異なります。
オープンメタバースの世界では、複数のメタバース間でデータを移行することが可能です。これに対して、クローズドメタバースでは、組織が運営をやめたり、悪意のある操作を行ったりするリスクがあるため、オープンメタバースの実現が期待されています。
そんなオープンメタバースの実現には、ブロックチェーン技術が活用されることが考えられています。
具体的には、従来の国家や企業の管理するサーバーではなく、ブロックチェーンシステム上にメタバース空間を構築することで、ユーザー自身が情報を管理したり、やり取りを行ったりすることができるというものです。
ブロックチェーンとメタバースの将来は、今後、どんどんと広がっていくことでしょう。
まとめ
ブロックチェーンの普及がますます進む中、今後の時代においてブロックチェーンに関する基礎知識を身につけることは大変重要になってくるでしょう。ブロックチェーンの導入をお考えの方はぜひこの機会に、ブロックチェーンの基本情報や活用事例などを学んでみてください。
また、メタバースやブロックチェーンに興味がおありの方は、株式会社リプロネクストにご相談ください。リプロネクストでは自治体や企業向けにXR・メタバースを提供し、全国的に注目を集めています。
企画から開発、運営までトータルにサポートし、新たな世界を共に築いていけることを楽しみにしています。
メタバースにご興味がある方は、ぜひ一度、お気軽にリプロネクストまでお問い合わせください。
「Metaverse tips」は株式会社リプロネクストが運営しています。
ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。