- 2023/12/27
- 2024/07/26
金融業界によるメタバースへの参入事例8選!今後の課題についても紹介
現実空間とは異なる世界を構築できる「メタバース」ですが、金融業界においてもメタバースへの参入が進んでいます。仮想空間でも金融商品の取引ができるなど、メタバースの活用で得られるメリットはさまざまです。
今回は、金融業界がメタバースへ参入した事例を紹介し、実際にどのような取り組みを行なっているのかを解説します。また、今後予想される動きや課題についても紹介しますので、メタバースに興味のある企業の方は、ぜひご覧ください。
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目次
1.メタバースとは
メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間を指します。「アバター」と呼ばれる自分の分身を操作しながら、現実世界と同じようにコミュニケーションが図れる点が特徴です。
メタバースの語源は、超越を意味する「meta」と、宇宙を意味する「universe」を組み合わせた造語です。1992年に発表されたアメリカのSF小説「スノウ・クラッシュ」にて初めてメタバースが使われたと言われています。
VRゴーグルを装着して自身のアバターを操作しながら、他のプレイヤーが操作するアバターと交流できるだけでなく、イベントの開催も可能です。そのほか、メタバース上の土地やデジタルオブジェクトの取引ができるなど、現実世界のような経済活動ができる点も特徴です。
2.金融業界がメタバースへ参入する理由
メタバースが普及することで、若い世代を中心に顧客を獲得できる可能性が広がります。現在は、大手の金融機関を中心にメタバース市場への参入が進んでいます。
世界のネタバース市場の規模は、2022年は8兆6,144億円となっており2030年には13兆9738億円まで拡大するとの予想です。日本のメタバース市場は、2022年度には1825億円だったものが、2026年度には1兆42億円まで拡大することが予想されています。
今後メタバースの普及が進むことで、仮想通貨などのデジタル資産での取引が活発になると予想されます。そのため、デジタル資産を管理するためのウォレットの必要性が増していくでしょう
日本では、価格の安定性を目指すために作られた暗号資産である「ステーブルコイン」などに関する規制を定めた「改正資金決済法」が制定されています。ステーブルコインを取り扱っている業者は、暗号資産交換業者として登録し、本人確認が必要です。
今後の市場規模の拡大により、メタバースは金融ビジネスにおいて重要な役割を担うと予測されています。
3.金融業界のメタバース参入による今後の動き
金融業界がメタバース市場へ参入することで、どのような動きが考えられるのか以下の2点について解説します。
- デジタル資産を活用した決済サービスの導入
- 新たな金融ビジネスの登場
3-1.デジタル資産を活用した決済サービスの導入
みずほ銀行では、2023年度中に「メタバースコイン」と呼ばれる国内銀行初の決済サービスの提供開始を発表しています。メタバースコインは、みずほ銀行が展開する決済サービス「Jコインペイ」の基盤を活用し、メタバース空間内での決済を可能とするものです。
銀行口座との紐付けが可能で、価格変動がない安定的な決済方法として利用できます。
アメリカのメタバースプラットフォームでは、メタバース内で直接法定通貨を使用して、ゲーム内通貨を購入できるATMサービスを開始。また、アメリカの大手決済会社はメタバースに関連する商標を登録しています。
日本の大手銀行ではスマートフォンの決済サービスを利用して、メタバース決済サービスの導入を検討しています。
3-2.新たな金融ビジネスの登場
メタバース上において、さまざまな金融ビジネスの登場が期待されています。現状ではメタバースでの活用を目指して、以下のような金融サービスが実証段階に入っています。
- 損害保険会社によるメタバース上で保険販売ができるチャネルの開発
- 証券会社による相場の疑似相談体験
今後は、現実世界に存在する自分だけでなく、メタバース空間でアバターとしての自分を対象とした金融サービスが展開されていくと予想。メタバースに関する法整備を進めていく必要があるものの、メタバースの利用者を増やしていくためにさまざまな可能性を検討していく必要があるでしょう。
4.金融業界がメタバースへ参入した事例8選
金融業界でも活用が進んでいるメタバースですが、ここでは以下の金融会社による参入事例について紹介します。
- 三菱東京UFJ銀行
- JPモルガン・チェース
- みずほ銀行
- 静岡銀行
- SMBC日興証券
- 損保ジャパン
- 東京海上日動
- 明治安田生命
4-1.三菱UFJ信託銀行
三菱UFJ信託銀行は、2021年9月にメタバースプラットフォーム「cluster」にて新卒採用イベントを開催しました。メタバース空間内に三菱UFJ信託銀行のオフィスを再現し、社内の雰囲気を感じてもらうことで、企業側との理解を深める効果が期待できます。就活生は人事部とのトークセッションや、内定者との座談会への参加が可能です。
三菱UFJ信託銀行は新卒採用イベントでの活用だけでなく、通常は立ち入りが制限されているエリアなどもメタバース上で公開。現在は「信託VR博物館」と呼ばれる、三菱UFJ信託銀行本社に隣接する信託博物館がVR上で楽しめるコンテンツを公開しています。
4-2.JPモルガン・チェース
出典:Bloomberg
JPモルガン・チェースは、アメリカのメタバースサービスである「Decentraland」にて「Onyx by J.P. Morgan(オニキス バイ ジェーピーモルガン)」を開設しました。ラウンジは同サービスに東京の原宿を再現した「Metajuku(メタジュク)」内に展開しています。
JPモルガン・チェースCEOのJames Dimon氏の肖像や、メタバースの進歩を辿った年表なども展示されています。また、ラウンジでは暗号資産やブロックチェーン技術に関連する相談や情報収集が可能です。
JPモルガン・チェースは、仮想空間での土地取引が活発になる中で、顧客の需要を探りつつ将来的な金融サービスの提供も検討しているとのことです。
4-3.みずほ銀行
みずほ銀行は、2022年に株式会社HIKKYが主催・運営するVRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」に出展。金融知識に関する座談会やオリジナル3Dモデルの配布などを行ないました。
出展会場の一つである「パラリアル大阪」にブースを構え、1階部分は交流スペース、2階部分はボルダリング体験が可能なタワーとなっています。ボルダリング体験では、出題されるクイズに正解することで上に登ることが可能。頂上に到達するとみずほ銀行オリジナルの王冠がプレゼントされるほか、パラリアル大阪の景色を楽しめる仕様となっていました。
みずほ銀行では、メタバース上の店舗で資産形成の相談や決済手段の提供などが検討されています。
4-4.静岡銀行
出典:日本経済新聞
静岡銀行では、メタバース空間内に支店を開設し、セミナーの案内や金融商品の紹介を行う実証実験を行なっています。店舗はガラス張りとなっており、富士山を模した背景を設定しているなど静岡らしさを感じさせる空間です。
店内の入り口に男性キャラクターが立っており、来店客へセミナーが開催される部屋へ案内するほか、女性キャラクターは総合案内を担う役割を持っています。利用者から受け取ったアンケート結果をもとに運営における課題を探っていく形をとり、将来的には接客トレーニングなどの行員研修でも活用していく方針です。
人口減少やインターネットバンキングの普及などにより、実店舗が減少していることを踏まえ、地域金融機能を維持しながら更なるオンラインの活用も視野に入れています。
4-5.SMBC日興証券
SMBC日興証券は、世界最大のメタバースイベント「バーチャルマーケット2021」において特設ブースを出展しました。相場の変動をジェットコースターに乗って体験できるコーナーや、証券アナリストとの座談会などのコンテンツが用意されるなど、楽しみながら金融について学べる仕様です。
「株価連動ジェットコースター」と呼ばれるアトラクションは、ジェットコースターに乗りながら株価の変動に関連したトピックが表示。現実世界では体験できないような演出で、金融の世界が楽しめます。
バーチャル座談会のほかに、相場解説などのスモールトークセッションも開催。専門部署の社員がアバターとして登場するほか、ブース内には資産運用や投資に関する情報を盛り込んだ動画やパネルが設置されていました。
4-6.損保ジャパン
損保ジャパン・ANA NEO・三菱UFJ銀行の3社は、ANA NEOが提供するメタバースプラットフォーム「ANA Gran Whale」内にて、新たな金融サービスの提携を目指して協業に合意しました。メタバース空間において、金融機能や金融サービスの提供に向けてのニーズ調査や検証、メタバース空間に関するデータ分析などを行なっていきます。
損保ジャパン・ANA NEO、三菱UFJ銀行は、Web3.0時代に向けてのサービスの提供や、利用者がデジタル化の恩恵を受けられる社会の実現を目指していく方針です。
4-7.東京海上日動
出典:東京海上日動
東京海上日動は、東京海上ディーアールとNTTコミュニケーションズと共同で、地震や水害などの大規模災害を予測するためのデジタルツインの活用に関する研究を進めています。
デジタルツインの構築に向けて、以下の技術をデジタルツインと組み合わせていきます。
- 東京海上日動や東京海上ディーアールが持つリスクデータやデータ解析に関するノウハウ
- NTTコミュニケーションズが持つ人流や空間などのデータ
防災科学技術研究所の協力を得ながら、複数の災害に対応可能な「マルチハザードソリューション」の提供も検討中です。リアルタイム性の高い被害予測モデルの構築のほか、災害の種類や規模に応じた、初期対応を複数策定するといったデジタルとリアルの連携に関する研究も進めていきます。
4-8.明治安田生命
出典:cluster
明治安田生命は、メタバースプラットフォーム「cluster」にて、サッカースタジアムを彷彿とさせるバーチャルスタジアムを展開しました。急速なデジタル技術の進化に伴い、新しい非対面のコンテンツとしてスタジアムの展開に踏み切った形です。
バーチャルスタジアムでは、Vtuberと一緒に健康に関する知識をクイズ形式で身につけるイベントを開催。また、保険を身近に感じられるミニゲームを開発するなど、健康増進につながるサービスの提供も進めています。
そのほか、Jリーグの試合映像を投影し、利用者同士がリアルタイムで観戦体験を味わえるイベントなども行なっています。
5.メタバース空間における金融業界の課題
メタバース市場はアメリカを中心として急速に拡大したことから、法整備などさまざまな問題が浮き彫りとなっています。その中でも、メタバースのコンテンツに関する著作権や商標権、アバターの肖像権などの取り扱いが主な問題点です。
金融面では、メタバース上ではビットコインやイーサリアムなどの暗号資産が通貨として使われています。しかし、変動が大きいことから仮想通貨取引所が倒産するといった事例も起きている現状です。
金融庁が公表している「主要行等向けの総合的な監督指針」では「銀行グループによる暗号資産の取得は必要最小限度の範囲とする必要あり」と記載されています。
金融機関がメタバース上で現実世界と同じようなサービスを全面的に行うことが難しいといった現状です。その一方で、銀行や信託会社においては一部の業務を引き受けられるといったコメントも金融庁から出されています。
メタバース上で株式や保険商品といった金融商品を紹介する場合、顧客とアバターを介して行われることが一般的です。しかし、アバター同士であることから実際の顧客の表情が読めないことから、顧客との信頼関係が築きにくいといった課題もあります。
商品説明に入る前に、お互いにメタバース上でゲームを行なって交流を深めることや、視覚や音響効果を活用してわかりやすい説明をするといったことが、課題解決の方法に挙げられます。
6.まとめ
メタバースの市場規模は、日本や世界で拡大傾向にあると予想されています。金融業界でもメタバースへの参入を進めている企業もあることから、メタバース上でデジタル資産の取引が活発になるでしょう。
一方で、法整備に関する課題も浮き彫りとなっており、メタバースのコンテンツに関する著作権やアバターの肖像権など解決すべき問題が多い点も現状です。
法整備が進み、課題が解決されていくことで、金融業界のメタバースへの参入がさらに進むと予想されるでしょう。
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