- 2024/01/29
- 2024/07/26
メタバースを活用したひきこもり支援の事例8選!メタバースのメリットも紹介
現実世界と異なる空間が構築できるメタバースですが、ひきこもり支援に活用できないかと考えている方もいるのではないでしょうか。ひきこもり支援にメタバースを取り入れている自治体は多く、実際に成果を挙げている事例もあります。
そこで今回は、ひきこもり支援に対するメタバースの活用事例やメリットについて詳しく解説します。ひきこもり支援にメタバースを取り入れたい方や活用事例を把握したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
1.メタバースとは
メタバースとは、現実世界とは異なるインターネット上に構築された仮想空間を指します。メタバースの由来は超越を意味する「meta」と世界を意味する「universe」を組み合わせた造語です。
メタバース空間の中では、アバターと呼ばれる自分自身の分身を作成。メタバース内でショッピングやほかのユーザーとのコミュニケーションを楽しめる点が特徴です。
メタバースでは、現実世界ではできないような体験ができるため、教育分野などでの活用も広がっています。また、ゲーム分野でも有名アパレルブランドによるアバター用の服の提供や、有名アーティストによるバーチャルライブなど、さまざまな取り組みが行われています。
2.日本におけるひきこもりの現状
内閣府が2023年3月に「こども・若者の意識と生活に関する調査」を公表しました。この調査では、引きこもり状態の人が15〜39歳で2.05%、40〜64歳で2.02%となっており、全国で約146万人いると推測されています。
引きこもりの定義については社会的に自立しているかに注目し、以下の外出状況に該当した人の中で、現在の状態となってから6ヶ月以上かつ病気などをしていない人を「広義の引きこもり」と定義しています。
- 趣味の幼児のときだけ外出する
- 近所のコンビニ等には出かける
- 自室からは出るが、家からは出ない
- 自室からほとんど出ない
15〜39歳で上記の外出状況になった理由は「退職したこと」が21.5%と最も多く、次いで「人間関係がうまくいかなかったこと」が20.8%です。40〜64歳については「退職したこと」が44.5%「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」が20.6%の順となっています。
そのほかの理由として、病気や人間関係などが挙げられていたことから、引きこもりは誰にでも起こりうる問題であることがわかります。
3.ひきこもり支援にメタバースを活用するメリット
ひきこもり支援にメタバースを取り入れた場合、以下のようなメリットがあります。
- 時間に縛られる心配がない
- 肩書きや経歴を気にする心配がない
- 対面でのコミュニケーションが苦手な人でも利用しやすい
- 当事者とコミュニケーションがとれる
上記のメリットについて以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
3-1.時間に縛られる心配がない
ひきこもりの当事者は昼夜逆転の生活など、生活リズムに偏りが生じているケースもあり、オフラインでは支援を受けにくいといった状況に陥ってしまいます。
しかし、メタバースはオンラインを活用するため24時間いつでも利用が可能です。自分の生活リズムの中で同じ境遇の人たちと交流を楽しめるほか、社会復帰に向けた支援を受けられます。
時間に縛られないだけでなく、自宅にいながらでも参加できる点もメリットの一つです。外出することに抵抗がある人でも、オンライン上で完結できるメタバースは社会復帰に大いに役立つでしょう。
3-2.肩書きや経歴を気にする必要がない
容姿や肩書き、過去の経歴を気にする必要がない点もメタバースのメリットです。ひきこもりの当事者の中には身体的なコンプレックスや肩書きに悩まされ、一人で悩みを抱えてしまうといったケースもあります。
悩みを抱えたままでは十分なコミュニケーションが構築できないほか、他人への劣等感を抱いてしまいます。
このように、さまざまな悩みを抱えている人にもメタバースの活用は有効です。自分の分身であるアバターを通じて交流することで、本来の自分を取り戻すことができます。また、ほかのユーザーと悩みを共有することで、孤独感の解消にも役立てられるでしょう。
3-3.対面でのコミュニケーションが苦手な人でも利用しやすい
メタバースでは、対面する必要がありません。オフラインで支援を受ける場合、どうしても対面でのコミュニケーションが必要なため、心理的なストレスを感じやすくなります。
先述した通り、メタバースはオンラインでの利用となることからコミュニケーションに対するハードルを下げられます。アバターを利用しての交流が楽しめるだけでなく、自分自身のコンディションに合わせて自由に利用方法を決められる点もメリットです。
3-4.当事者とコミュニケーションが取れる
対面での支援が必要な場合、引きこもりの当事者とコミュニケーションをとることが難しく、支援に限界が生じる点が課題でした。しかし、メタバースを活用することで自宅からでも参加できることから、オンライン上で相談員と会話ができるようになります。
当事者は支援に対する心理的なハードルが下がるため、ひきこもりに関する悩みなどを打ち明けやすくなります。また、相談員にとっても本人から直接話を聞けるようになり、ひきこもりの解消に向けて適切なアドバイスが可能です。
4.メタバースを活用した自治体のひきこもり支援活動8選
メタバースを活用したひきこもり支援は全国で行われています。ここでは、以下の8つの事例について紹介します。
- 神奈川県「ひきこもり×メタバース社会参加支援事業」
- 山梨県甲府市「全国初。メタバースひきこもり相談窓口」
- 兵庫県神戸市「ひきこもり当事者会」
- 大阪府八尾市「メタバースde居場所」
- 福井県越前市「メタバースこころの保健室」
- 香川県「ひきこもりの方を対象としたオンラインスペースを開設」
- 京都府「メタバースを活用したオンライン居場所を開設」
- 東京都江戸川区「オンラインとリアルを組み合わせた交流会を実施」
4-1.神奈川県「ひきこもり×メタバース社会参加支援事業」
出典:神奈川県
神奈川県ではひきこもりの当事者を対象に、他者との交流や就労のきっかけ作りを目的とした「つながり発見パーク」を開催しました。
オープニングイベントでは黒岩神奈川県知事がアバターとして登場。そのほか、Vtuberでキャリアコンサルタントの「癒色えも」さんとメタバースガイドの「おたきゅん」さんがメタバースに関する仕事を紹介しました。
イベント期間中は参加者との交流や、趣味や仕事に関する漫画の閲覧ができるなど、メタバースを通じて自身のキャリアを見つめ直す機会が提供されました。
4-2.山梨県甲府市「全国初。メタバースひきこもり相談窓口」
山梨県甲府市健康支援センターは、メタバースプラットフォーム「DOOR」を活用して「甲府市メタバース心のよりどころ空間」を開設。株式会社リプロネクストが開発を担当し、甲府市のひきこもり支援窓口として利用されています。
甲府市には約130人のひきこもり当事者がおり、その中の70%が40〜60歳が占めている状況です。また、地域交流や近所付き合いが減っていることで、ひきこもり当事者の把握が困難であることも今回の取り組みのきっかけです。
「甲府市メタバース心のよりどころ空間」には、以下の2つの空間が用意されています。
- ひきこもりに関する情報や相談方法がまとめられた「心のよりどころ空間」
- 甲府市民を対象に精神保健福祉士に相談できる「森の相談ルーム」
甲府市では、メタバースの活用により相談がしやすい環境を構築できるよう取り組みを進めています。
4-3.兵庫県神戸市「ひきこもり当事者会」
出典:SUISEI
兵庫県神戸市の神戸ひきこもり支援室は、社会復帰を望むひきこもり当事者を対象とした交流会を開催しました。メタバースプラットフォーム「ovice(オヴィス)」を利用して、アプリの使い方の指導やチャットでの交流、グループワークなどを実施。
参加者からは、同じひきこもり当事者として気軽に話しかけられたといった感想を得られるなど、交流会を開催した意義は大きいものでした。今後は起業家らを招いての交流会なども検討しているとのことです。
4-4.大阪府八尾市「メタバースde居場所」
出典:産経新聞
大阪府八尾市では、2023年からメタバースを活用したひきこもり支援を行っています。「メタバースde居場所」と称した取り組みでは、漢字や計算のクイズや動画鑑賞など通して交流を行っています。
アバターを通してチャット機能で会話が可能。また、アバター同士が近づくと少人数でのやりとりができるなど、コミュニケーションが取りやすい環境となっています。
取り組みがスタートしてからは子どもたちにも変化が現れるようになりました。ある女子生徒は、ほかの生徒がいる時間帯には入室できなかったものの、時間外にメタバース空間を訪れ課題をこなす姿が見られるようになりました。
メタバースde居場所は、8月に最大50名の小中学生を受け入れるなど、支援の強化を図っています。
4-5.福井県越前市「メタバースこころの保健室」
出典:メタバースメンタル
福井県越前市では、メタバース上に引きこもりなどの悩みを持つ人を対象とした相談や支援を行う「越前市メタバースこころの保健室」を開設。対面での相談が苦手な人でも、アバターを用いて医師との相談や交流が可能です。
2023年2月にメタバースによるヘルスケアコミュニティサービスを展開する「株式会社comatsuna」と協定を締結し、プロジェクトを進めています。
越前市では2021年度に「福祉総合相談室」を開設し、引きこもりに悩む家族との相談や自宅を訪問しての支援といった活動を実施。しかし、引きこもりの当事者に会うことができないと言ったケースもあったことから、今回のプロジェクトが進められることとなりました。
4-6.香川県「ひきこもりの方を対象としたオンラインスペースを開設」
出典:読売新聞
香川県では2023年4月にひきこもりの当事者向けのメタバース空間「ヒトトキ」を開設しました。ロールプレイングゲームのような空間の中で、アバターを通してほかのユーザーとの交流が楽しめます。空間内では必ず会話をする必要もなく、思い思いの時間を過ごせる点が好評です。
香川県では2020年度にひきこもり支援を行っている3つの団体が協力し、ひきこもり当事者が交流や相談ができる施設を3ヶ所設置しました。2022年度には46名が利用しましたが、対面での相談に不安を抱える人や、アクセスに不便さを感じるなどといった課題も浮き彫りに。
課題を解決し、支援を強化するべくメタバースに注目し、今回の取り組みがスタートしました。今後は、ヒトトキ内でゲームを用いた交流や講演会などを行うとのことです。
4-7.京都府「メタバースを活用したオンライン居場所を開設」
京都府でも、ほかの自治体同様にメタバース空間を活用した支援活動を行っています。不登校経験者向けの学習塾を運営する株式会社キズキが運営しており、2023年4月から週2回実施されています。
活動内容として、アバターを用いての相談や交流、学習支援などを実施。そのほかにもクイズやゲームを用いた交流会や、当事者同士の座談会などがメタバース内で体験できます。メタバース内でのさまざまな取り組みから当事者が抱える悩みを共有し、社会復帰への足がかりを作っていきます。
4-8.東京都江戸川区「オンラインとリアルを組み合わせた交流会を実施」
出典:日本経済新聞
東京都江戸川区では、ひきこもり当事者の段階的な社会参加に向けて、メタバースを活用したオンライン居場所を2023年6月に開催。リアル会場との同時開催とし、合わせて29名が参加しました。
江戸川区では、これまでビデオ会議を活用した交流会を実施。しかし、当事者から顔出しに抵抗があるとの意見が出ていたことから、今回メタバース空間を利用しての開催となりました。
オンライン居場所では事前に募集したテーマを投票で決定。「家族にしてほしいこと、してほしくないこと」がテーマに決まり、メタバースから参加していた当事者からは「味方でいてほしい」「暴力は絶対いや」といった意見が寄せられました。
オンライン居場所は今後も開催が予定されており、当事者の社会参加を実現できる取り組みは続いていきます。
5.まとめ
内閣府の調査では、現在ひきこもりの当事者は全国に約146万人いると推測されており、多くの自治体でメタバースを活用した社会参加への取り組みが行われています。
ひきこもり支援にメタバースを活用するメリットとして、経歴や肩書きを気にすることなくアバターを通して自分らしさを出せる点です。そのほか、対面でのコミュニケーションを強いられることもなく、自分の体調に合わせて自由に利用できるため、利用のハードルも下げられます。
地方自治体だけでなく、国もひきこもり支援にメタバースの活用に前向きであることから、より効果的な支援が期待できるでしょう。
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